ルカは閉じていた目を開け、視線を王たちに戻した。
王妃の姿が薄くなっていく。
(…世に言うところの"成仏"か。)
ルカはぼんやりと思った。
『母様…!』
ロザリアが泣いてすがる。けれどその手は王妃を通り抜けるばかりだ。
『…私はいつでもあなたたちの傍に居ますよ。だから、泣かないのっ』
王妃はふわっとロザリアの頭を撫でた。触れる事はないけれど、ロザリアは確かに母の温かさを感じた。
フッ…と空気が揺れる感覚がした。王妃の姿は見えなくなった。きっともう、ネリーにも見えないのだろう。
王は静かに涙を流していた。イザベルは妹の肩をそっと抱き寄せた。バレスは離れた場所でうっうと男泣きしている。ルカはそんな光景を見つめながら思う。
(私にはヒトの"家族"と言う感覚はわからない。わからないけれど…)
この涙は美しいと思った。最愛の人を想って流す涙は美しいと思った…。
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