「ご心配なく。危害を加える気はございませんので。ただ、ご家族以外の方はご遠慮頂きたい…」
ルカは言いながら、ツイッと人指し指を動かした。シークの目蓋が下りていく。
「それから…阻んでいるのは私の魔法ではありませんから…念の為。」
床に崩折れる。フ…ッとシークの意識は途絶えた。
「魔法使い…?」
バレスの声がした。振り向けばバレスが呼吸も荒く、壁に寄り掛かって立っている。
「ハァ。お前、いきなり消えて、どこ行ったかと思え…ば…」
バレスは廊下の様子に気付いた。
「…!お前これは…っ!」
バレスが声を荒げる。
その時、カチャと鍵を開ける音がした。二人とも振り向く。
姫の部屋から出てきたのはネリーだった。
「…すまない。怯えられて…頭をぶつけさせてしまった。」
ネリーが詫びた。どうやらさっきのは、扉を蹴った音でなく、ロザリアが頭をぶつけた音だったらしい。
「…ネリー、バレスは?昔からいる王宮の人間だけど。」
クイッと親指を反らして聞く。
「……その者なら良い、と。」
一瞬空中に視線を漂わせた後、ネリーは答えた。
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