「それじゃ…そろそろ行こうか」
ネリーが消しおわるのを見計らってルカが言った。
「……。」
ネリーは無言で頷いた。
ルカは移動の魔法を用意するとネリーの手を取る。そしてネリーと呼吸をあわせるようにして言う。
「1、2、3。」
二人の姿はネリーの館から消えた。そしてほぼ同じ頃、二人は王宮に現れた。
「あ!魔法使い!どこ行ってたんだよ!勝手に消えるなって言って……誰だ?」
バレスはルカに向かってまくしたてていたが、ネリーの姿を見咎めると怪訝な顔付きで聞いた。
「ネリー・マラドール、私の同級生です。ロザリア様に用事があると言うので連れてきました。」
「あー…姫様ねぇ…」
ルカの言葉にバレスは歯切れが悪い。
(そう言えばチェスの試合をしてたはずじゃ…?)
ここは大広間だが、出てきたときには人で一杯だったのに、今はバレス以外いない。不思議に思ってルカが尋ねると、バレスは誰もいないのに声をひそめて言った。
『姫様が負けたんだよ。なんかシークさん、去年のチェス大会準優勝者だったらしくて…』
姫は不貞腐れて今、部屋に籠もってる。とバレスは言った。
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