ルカはネリーから視線を逸らすと自身も部屋の中へと足を踏み入れた。
「…私にどうしてほしいんですか?」
ルカは答えをわかっていた。が、あえて聞いた。視線は依然外したままだったが、ネリーからの突き刺さるような視線をひしひしと感じていた。
「…私を王宮に入れてほしい。さもなくば、姫を連れてきてほしい。」
ネリーは歩くルカを目で追いながら言った。ルカは王妃の前に立つと口を開いた。
「王妃様は何をお望みで…?」
その言葉はネリーに向けられたようにも、王妃自身に向けられたようにも聞こえた。
「……。」
ネリーは答えなかった。王妃が目をあけた。
『あの子に告げなくては…私の想い…考え…総てを…』
王妃の声は霧のかかったような彼方から聞こえてくる声だった。
『私はこの命…あの子に捧げたこと…後悔などしていない…あの子に伝えなくては…あの子は優しい子だから…』
王妃の顔に微笑みとも泣き顔ともとれる表情が浮かんだ。
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