扉に触れた指先から流れ込んでくる。
白いバラ。棺。生気の無い母様の姿…
(これは私の想像にすぎない。私は葬儀には立ち会っていないから。なのに…とても……生々しい。)
ロザリアは眉をひそめた。
『大嫌い!』
『あんたの所為で…っ』
響く声に思わず耳を塞ぎたくなる。けれど…
(それじゃ何も変わらない…)
『ゆるさない。母様の死を無駄にしようなんて…ゆるさないから!』
私を睨み付ける小さな私。
事実を受け容れるには、あの頃の私は幼すぎた。
だから蓋を閉めた。
私を責めるモノ、私の存在を否定するモノから逃げてばかりだった。
私は今もまだ弱くて、自分の存在理由もわからないけど
それでも待っていてくれる人がいるなら
頑張れる気がするの。
だからもう逃げない。
受け容れるよ。
事実も。 そして
…あなたも。
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