「ぎゃ!」吸血鬼は床に倒れた。今のルカは容赦がない。今度は床に大きな円を描くと中から人を釣り上げた。吸血鬼の息子。治癒者のキトである。
「痛い!何!?」キトは頭を擦りながら見上げた。そして青ざめた。
「ルカ・イヴェール…」
ルカが恐ろしい形相で立っていた。コントロールしきれない魔力がルカの後ろで渦巻いている。
「姫を元に戻せ…っ。ちょっとでも変な事してみろ…。この親父を霧のように粉砕して二度と戻れぬようにしてやる…っ!」
この時のルカに逆らう勇気のある人がいたらぜひともお目にかかりたい。とにかく反論でもしようものなら直ぐ様消されてしまいそうなほど凄まじいものだった。「はっ…はいぃぃ!」
キトは直ちに取り掛かった。その間ルカは吸血親父を踏ん付けていた。窓の外ではルカの魔力に反応した悪魔が踊り浮かれている。
「ルカさん?」
正気に戻ったロザリアが呼び掛ける。
「ちゃ…ちゃんと戻っただろ!?」
キトが怯えながら言う。
ルカは無言でキトと吸血鬼を引っ掴むと開けたままになっていた魔法の円に突っ込んだ。
「うわぁ!」
キトの叫び声。
「…ご苦労様。」
ルカの言葉と共に円は閉じられた。

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