「どうでもいいが、姫様のベッドから降りろっ。こっちに座れ。」
バレスはソファを指差しながら言った。ルカはおとなしくそれに従う。
「ほらよっ!」
バレスはカップを差し出した。そして自身もソファに腰掛け、自分のカップには角砂糖を放り込んだ。
ルカは紅茶のカップを口元に近付けながら尋ねた。
「時に、ミスター・ジョアヌ。ロザリア様は過去に大怪我したことがございますね?特に…後頭部の辺り。」
バレスは胡散臭そうに目を細め、ゆっくりと言った。
「……それが何だと言うのだ?」
「治療をしたのは誰です?」間髪与えずに聞く。
「………。」
バレスは押し黙った。ルカは紅茶に視線を落としたまま言った。
「魔法使いでしょう?大方医者も治癒者も治せなかったから魔法使いに頼ったのでしょうね。」
「………。」
「あの方が予知夢を見るのはそのせいですよ。」
バレスは思わず顔を上げた。ルカは紅茶を一口飲んだ。紅茶にはいつのまにかレモンが浮かんでいた。

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