桜林高校、卒業式の日。私の名はここの式場では呼ばれない。
高校の名前通り、この季節華やかに桜が舞い散る正門から式場への道のりの中、私は美和子の前に立っていた。
「あんた何でいるの?」
美和子の眉根に皺が寄る。
…恐い。だけど。
「私、言いたくて。美和子といた日々は本当に楽しかった。一緒にいてくれて、ありがとう。」
『ごめん』じゃなくて言いたい気持ちは『ありがとう』。
ただそれだけなんだ。
土崎が友達とバカ騒ぎをしながら卒業証書片手にこっちへ向かって来るのが見えた。私に気付いていない。
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