そんな事を思い出していると、中から、
「用がないならノックしないでよ!」
と声が聞こえた。
 お金を借りられなくなったら意味がない。俺は急いで部屋に入った。
香織にお金を貸してくれと話すと、意地悪そうな顔をして、
「利子付きなら、い〜わよ。」
と言った。
俺が、
「利子ってどのくらい?」
と聞くと、香織は意地悪そうな顔のまま答えた。
「そ〜ね、百円の板チョコの欠片一つで50円払うくらいね。」
それを聞くと、闇金の方が香織よりは優しいんじゃないか?と俺は思った。
香織は俺にどうする?って顔で待っている。
散々迷った挙げ句、香織、いや、この『金の亡者』には金を借りず、俺の一万円札を使って、後で親から小遣いを貰うことにした。
香織にソレを話し、部屋を出ようと背を向けると、明るい声で「金ヅルが逃げたゎ。」と言ったのが、後ろで聞こえた。
部屋へ戻ると、俺は、財布から一万円札をひっ掴み、ポケットにねじ込んだ。
「もともと、母さんが新しいアイス買って無いから…」などと、独り言を呟きつつ、自転車に飛び乗り、近所の駄菓子屋に急いだ。

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