…が、あるはずのそれはなかった。食いしん坊の母が食べたのだろうと渋い顔をしつつ、俺は頭を掻き掻き、部屋に戻った。
しかし、こうも暑いと勉強もはかどらず、仕方なく何か冷たい物でも買いに行こうと考えた俺は、あまり残っていないであろう、軽い財布を開いてみた。案の定、数日前に友達とゲーセンに行ったために千円札や小銭はなく、
お盆にじいちゃんから貰った一万円札が、財布の中に残っていた。
使うのがもったいない、と考えた俺は、両親が出かけていたため、二階にいる、俺より五つ上の姉の香織に、千円貸りるつもりで、部屋のドアをノックした。
すると、いつもの様に、
「入ってい〜わよ。」
と、香織が答えた。

以前、コレが聞こえる前に俺は入った事がある。が、
ドアを開けた途端、姉貴から部屋にあったクッションを、顔面に投げつけられ、俺は尻餅を付いたのである。
その後、
「何かヤマシイ事でもあるのか?」と、痛む尻を摩りながら、俺は香織に聞いてみた。すると、
「アンタまで、親父みたいな事言わないでよ。」
とこずかれたのである。
つまり、オマエは知らなくてよろしい。と言うヤツだ。

< 2 >

[1]次へ
[2]戻る

[0]目次

Tag!小説


トホーム