あの日、泣くのをぎりぎり堪えているはずなのに彼女の瞳は信念があるかのように見えた。
「俺のこともう好きじゃないのか?あんなに好きと言ったことはすべて嘘だったのか?」
「なんて言ったら良いのか分からないの。」
雨のスターバックスはコーヒーの薫りが充満していてで外の雨の気配を遮断してしまっていた。
「あいつのどこが俺よりいいんだよ。あんなサエないの由美子には似合わないのに。」
愚問だった。自分でも分かったが止まらなかった。正直な気持ちだった。美人で明朗快活で天真爛漫な由美子、僕らは自他共に認める理想の恋人同士だったじゃないか?
「すき…分からないの。すきって何なの?欲情なの?それとも愛情?もうわけが分からないの。健司は私に何を感じているの?」
彼女はそう言って春の雨にけぶる街に消えていった。泣いてはいなかった。
由美子、今、僕はきみに手紙を書こう。「すき」という二つの音に隠してごまかしてしまう馬鹿らしくて狂おしい僕のきみへの情熱と欲情と同情と尊敬とそして愛情について。由美子自身に確かめてほしい。

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