木崎がふわりと手をあげる。

曲は静かに、そしてゆっくりと終わりを迎えた。

舞い上がる拍手。
歓声を上げる観客。

「…っ」
私は言葉が出なかった。
ただ頬を濡らす無意識の涙。


私は急いで客席から離れる。


…バンッ

舞台裏の入り口の扉を勢いよく開く。

「びっくりした…」
木崎は驚いていたが急に真面目な顔をして、言い放った。

「このまま逃避行しちゃう?」

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