私は黙って聞いていた。まだここに少しの時間しかふたりでいないのに…随分長く感じた。
私たちの周りの時だけがゆっくりと進んでいるというように。
「これでも、あいつにはかなわないって分かってるつもりだよ。さくらちゃんがさっき言ったのそのままなんだ。だけど幸せになってほしいんだよ。誰よりも」
…ほんとに私と同じだ。自分の気持ちが今1番分かるように、彼の気持ちを今1番分かるのは私なのかもしれない。痛いほどその気持ちがよく分かる。
「おーい!伊崎!おまえ、こいつ何とかしろっ」木崎がまゆを指さして何か叫んでいた。
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