しばらくして花火が残り少なくなる頃、木崎が私の肩を叩いた。
「何?」
「線香花火、残ってるぜ」
(…?)私には訳が分からなかった。
「…だから何なの?」いつものように自分が思った通りの事を口にする。
「は?決まってんだろ?線香花火っつったらどっちが長く保てるか競争すんもんだろ」
…。こっちこそ『は?』である。たまにだけど木崎は妙に子供じみていると、思う。
「…分かったわよ。やるわ」私はそんな木崎を相手に闘志を燃やす。
「ふたりとも恐ぃ」
まゆのその愛らしくも心底、恐れた呟きが夜の海辺に響きわたった。
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