沈黙が続く。私は一歩も動かなかった。
薄暗い舞台裏で先に声を出したのは、なっちゃんだった。
「なかなか退場しねぇから何かあったのかと思ったぜ?」
「悪かったわね。いっぱいいっぱいだったのよ」私は負けずにきつく言ってその場を去ろうとした。ひどいよ、『よかったね』の一言もないなんて。
「ちょ…待てよ!」呼び止める声が聞こえたがわざと無視した。
「悪かったよ!俺、あんまうまく思ったこと言えねぇんだよ。モニターでずっと見てた。最後固まってたのは心配したけど、あとは安心して聞くことできた。…おまえ、うまかったよ」

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