藤堂家は水上と並ぶ名門。ヘタな嫁なんか貰えば家の威信に関わるので、結婚相手に対するハードルはメチャメチャ高い。だから玉の輿狙いで婚約者になれるはずがない。

(…先輩はきっと…多大な努力をしたに違いない。それほどまでに高瀬さんのことが…)

「…なによ。」
鏡子の眉間にシワが寄る。

「…何?その目は。…哀れんでるの?…あんたがそんな目するわけ?私から婚約者の地位を奪ったあなたが?…許さないから…」

鏡子はそう呟くとブレザーのポケットからカッターを取り出した。

「あなたさっき、私の好きにしていいって言ったわよね?」
カチカチカチ…と刃を出しながら言う。

「じゃあその長い髪とサヨナラしてもらうわ…」

ぐっと黒髪を引っ張る。

カッターが当てられたその瞬間。


ガッシャァァァァァン…!


天窓が割れた。

複数の人が飛び降りてくる。

「よっ!水上、無事か?」
一番最初に降り立った人物が言った。

「…葵さん?」
悠紀はきょとんとした。

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