悠紀は上半身だけ起き上がった。鏡子を見上げる。

「ふふっ…なぁに?ただで済むと思うなとでも言うつもり?」
鏡子は笑う。でもその目は少しも笑ってない。

「いえ…先輩が私に償いを求めるなら先輩の好きにして下さい…ただ…」

「ただ?」

「あの下剋上は全て私に責任があります…私が高瀬さんを誘ったのですから…」

悠紀の言葉に鏡子はせせら笑いをした。

「うふふ…なぁに?恋人を庇って貴い自己犠牲とでも言うのかしら?」

「私、あなたのそう言う所が一番嫌いなの。悲劇のヒロインぶって…はっきり言って目障り。消えて。」
冷酷に言い放つ。

「消えて!邪魔なのよ!あんたなんか居なくなれ!」
それは悲痛な声だった。

「せんぱ…い?」
悠紀は鏡子の頬へと手を伸ばした。

鏡子は…
泣いていた。

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