Game ―vs鏡子―
最初に見えたのは、コンクリート打ちっぱなしの壁。
悠紀は床に横たわった状態のままノロノロと視線をさ迷わす。何もない。
ゴロンと仰向けになった。高い天窓から月明かりが入ってきていた。
何だかダルい腕を持ち上げて時計を見る。午後8時。
「はー…」
ため息を付いて目を閉じた。
その時。
「気が付いたかしら?」
誰も居ないと思っていた部屋の隅から声がした。
「穂積先輩…」
悠紀は目を閉じたまま呟いた。
「どう?ここは。水上家の優秀な長女サンは初めてでしょう…?こんな薄汚れた部屋。でもお似合いよ?」
ふふふ…と不気味な笑いが部屋中をこだました。
「…住んだことはありませんが、押し込まれたことは多々あります…。よく誘拐されましたから…」
「あら…、そう。」
鏡子の声が冷たく響いた。
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