Memory ―悠紀―
あれは桜舞い散る4月―…
「下剋上しませんか?」
初めて同じクラスになった日。私は誘いをかけた。
「…水上にしては面倒な事を考えたものだな。」
彼は呆れたような声を出した。
そう…下剋上なんて面倒な上、成功する保証もない。実際、上手く行った例は1つもない。
私の提案は叶うことのない夢物語のようなもの。
だけど、成功するかなんてどうでもいい。
私はただ、彼に見てほしいだけ。
“ライバル”ではなく、
“水上悠紀”と言う
“一人の女”として。
だから私は繰り返す。
「下剋上、しませんか?」
滑稽でも何でもいい。
「私と一緒に。」
振り向いてほしいから。
「どうですか?」
たった一人の、
「…高瀬さん?」
大好きなあなたに。
< 26 >
[1]次へ
[2]戻る
[0]目次
Tag!小説
トホーム