集団の中の一人が飛びかかってきた。
「!?」
悠紀は反射的に身をかわした。黒髪が廊下に散った。相手は刃物を持っていた。
「クスクス…どう?私の用意したゲーム、楽しんで頂けそうかしら?」
集団の後方から声がした。目をやる。
「あなたは…!」
悠紀は絶句した。
そこにいたのは前・生徒会長、穂積鏡子[ホヅミ キョウコ]だった。
「…驚いた?そうよね…まさか私だったとは思わないでしょうね…だって私とは半年前に勝負がついているものね。あなたが仕掛けた下剋上で。」
ふふっと笑う鏡子。悠紀は固い表情で何も言わない。
「…ようやく上が卒業して、やっと会長になったのに…入学してすぐの1年に奪われる…これがどんなに屈辱的なことか…わかるかしら…?」
鏡子の目が妖しく光る。
「あなたには罰を受けてもらうわ…私を傷つけた罰。」
パチン。
鏡子が指を鳴らした。
「!」
途端に悠紀の口元にハンカチが当てられた。頭がくらくらする。
霞んでいく鏡子の姿を見つめながら、悠紀は4月の出来事を思い返していた。
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