Chapter.12 魔法の使えない魔法使い

ロザリアが一枚のドアの前に立って深呼吸をしている。その後ろでロザリア以上に緊張して落ち着きがないバレス。そんな二人をルカはぼんやりと眺めていた。

(人間て、不思議…)

ロザリアが震える手でドアノブを掴もうとしている。バレスはそれを身を乗り出しつつも、固唾を飲んで見守る。

(なんの力もないのに何故、自分が傷付くかもしれないことに立ち向かえるのだろう…。)

ロザリアが扉に触れた。それに対応するように別の扉からロザリアが出てきては別の扉へ入っていく。

(記憶の関連…。)
一つのモノに様々なエピソードがあるように、一つの記憶にも色々な記憶が密接に絡んでくる。それが扉を行き来するという形になって表れているのだ。

(人間と同じね。ヒトは一人では生きられない…。)

ルカは扉が浮かぶ空間を見上げた。そして、ゆっくりと目を閉じた。

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