「…今まで高瀬さんに近寄る女の子…いなかったからな…ぁ」
(高瀬さんの隣にいるのは私だけだったもの…)
「…こんな私…嫌われちゃうよ…」
目の奥がじーんとしてきて、悠紀は腕をずらして覆った。
「…私…あの人みたいに美人じゃないし…っ高瀬さんのお父様によく思われて…ないし…っ須岐にうざがられる程…シスコンだし…弟も大好きだし…ぃ」
目頭が熱い。
「…羽衣さんみたいに…可愛いこと…言えないし…独占欲も…嫉妬心も…強いみたいだし…っ…嫌われ…ちゃう…よ…ぉ」
「…誰が嫌うって?」
突然の声にビクッとなる。けれど聞き間違えようもない…
「…高瀬…さ…ん…?」
悠紀は入り口に顔を向けた。涙で滲んでうまく見えないけれど、ドアに寄り掛かっているのは確かに高瀬だ。
「ぐず…っ…今授業中ですよ…?」
悠紀は涙を拭きながら起き上がる。
「…その言葉、そっくりそのまま返すぞ。」
高瀬が言った。
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