(自分の…た…め…)
悠紀は心の中でその言葉を反芻した。そして気付く。

(…そうだ…私は…この人達が男子にちょっかいだそうとどうでもよかったんだ…ただ、私は…)

悠紀は目を逸らして俯く。始業のチャイムが鳴った。
「……失礼いたします。」
悠紀は低く呟いて会議室を後にした。




「……珍しいですわね。咲紅様が女の子にあんな言い方するなんて。」
悠紀が去った後の小会議室。咲紅の取り巻きの一人が言った。
「咲紅様は女の子にはいつだってお優しいですのに。」

「うふふ…あんまりにも綺麗だったから…いじめて泣かせてみたくなってね…泣いてくれなかったけれど。うふふふふ…」
咲紅は気味の悪い笑い方をした。




…会議室を出た悠紀は階段を駈け降りた。

(いや…っ。こんな自分は知りたくない…っ!こんな…こんな…っ!)


思いを振り払うように。

廊下を、走りぬけていく。

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