悠紀は小会議室の扉を戸惑う事無く開けた。けれど相手は年上の3年。口調も幾分和らぐ。
「失礼。生徒会長の咲紅と言う方はいらっしゃいますか?」

奥に人だかりが出来ていた。その中心にいたらしい人物が立ち上がってやってくる。悠紀はハッとした。

(まさか…っ!)

「私が咲紅ですが…何かご用事かしら…?」
そう言って妖艶に微笑んだ彼女は、悠紀と同じ長い黒髪。それにこの香りは…

(…鈴蘭…っ)
悠紀は思わず手で鼻を覆う。心に浮かぶは嫌悪の気持ち。表情まで…歪む。

「あなた…大丈夫?具合でも悪い…」

悠紀は伸ばされた手をすっと避けた。一歩下がると相手の目を見据えて言う。

「…今日はお願いがあって参りました…。女生徒を代表して言います。男子に近寄らないで下さい。」

悠紀の言葉に咲紅は少し考える。考える様子も艶っぽい。それに悠紀は更に嫌悪が募る。

「なぜ…か、聞いても宜しいかしら?」
咲紅が言う。
悠紀は苛々しながら答えた。

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