段々と人が増えてきた。保護者席へ向かう。私より幾分年齢構成の高い奥様たちに近寄る気になれず、隅の席に陣取る。

(どうやって使うんだろ)
高瀬様の携帯を開いていじくる。私は普段、携帯は電話としてしか利用しない。正に“携帯電話”だ。

ｶﾁｶﾁと押しまくっているうちにﾋﾟｸﾁｬのﾌｫﾙﾀﾞが開いてしまう。

(あ…)
私の目に飛び込んできたのは修学旅行のｽﾅｯﾌﾟ写真。
(…珍しい。高瀬様が思い出に残るような物を…)

そう思いよくよく観察してしまう。一緒に写っているのは加賀様。おそらく無理矢理ﾂｰｼｮｯﾄにされたのだろう、物凄く嫌そうな顔だ。

(微笑ましいですね。)
思わず笑みがこぼれる。

あんまり見てはﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰの侵害と思い、閉じようとした。が、誤って別の写真を開いてしまう。

(あぁ、もう…)
今度の写真も修学旅行中の物だったが、高瀬様は写っていない。代わりに一ノ瀬様と水上様。いずれもｶﾒﾗ目線でない。隠し撮りだろうか。

(高瀬様はこの二人のどちらかが好きなのか…？)

ちらっと視線を新入生席へ向ける。


入学式開始の旨のｱﾅｳﾝｽが響いた。
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