(フゥ…。私もここに居てもしょうがない。)
高瀬様の後を追う。その途中で女の子にぶつかってしまった。
「あ…すみません。」
謝ってからふと思う。この方、どこかで…
「いぃえ、こちらこそ、すみません。」
彼女はにこやかな笑みでそう言うと去っていく。
すれ違う彼女の横顔を見て思い出した。
…そうだ。
彼女は、幼等部の頃から高瀬様と双璧と言われ続けている、水上家の優秀な長女―――――――水上悠紀。
(利緒様そっくりだな。)
私は彼女をしばらく見送った後、フィッと向き直り、また式場へと歩き始める。
暖かい春の日差し。
(式の間、寝ないように気をつけなければ…)
入学式まであと30分だ。
< 6 >
[1]次へ
[2]戻る
[0]目次
Tag!小説
トホーム