親子バトルを眺めながら悠紀は言う。
「えと…有明さんは詳しいんですね、藤堂家のこと。」
「ええ、小さい頃からお世話になってますから。今でこそ秘書ですが、昔は駿河様の世話役だったのですよ。」
「あぁ、だから…」
悠紀はさっきの二人のやりとりを思い返した。

「悠紀、行こう。捜しに来てくれたのだろう?」
気が済んだのか、決着を付けた高瀬が言う。
「あ!そうでした!」
悠紀は当初の目的を思い出した。
「急がなくては…もう上演時間になりますよ?」
有明が時計を見て言う。
『えっ!』
二人は驚きの声を上げた。「行くぞっ」
高瀬は悠紀の手を引っ張って走りだす。座り込んでる駿河の横を通り過ぎる時、悠紀は言った。
「ぁ…お大事にっ!"駿河さん"っ」


「"駿河さん"…か。」
二人が駆け抜けていった後の廊下で駿河は呟いた。
「やっぱりそっくりだ。いいねぇ。私がお嫁に貰っちゃうかな。」

「…またそんなことを。奥様と高瀬様に殺されますよ。」
有明が呆れ顔で言った。

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