高瀬は頭を抱えていた。
原因は理事長室からかけた電話だ。

<父さん!どういうつもりだよっ。見合いはしないって言っただろ!?>
高瀬は抗議した。
<あぁ言った。だから見合いなしで婚約者を決めたんだ。>
<そう言うことじゃないっ。政略結婚みたいなことが嫌だって言ってるんだ!>
<なぜ嫌がる?写真も見てないのに。なかなかの美人だぞ>
<俺にはっ付き合ってる彼女がいるんだっ!>
<だから?>
その言葉に高瀬は勢いを削がれた。
<だから結婚は…>
高瀬の言葉を遮って父は言う。
<おまえが付き合っているのは水上の娘だろう。>
<え…あぁ。>
言ったことないのに、と思いながら返事をする。
<それだったら認められないな。>
<…っ、どうして!>
高瀬は再び勢い込む。しかし電話の向うで秘書の声。
"社長、時間です"
"わかった"

<…また電話する。>
そう言って電話は切れてしまった。

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