そして、8月。
秋彦が帰ってきた。
「お帰りなさい、秋彦さん。オーストリアはどうでした?」
悠紀がにっこりと尋ねた。
「よかったよ。姉さんたちにも久ぶりに会えたし…ってちょっとぉ!勝手に開けるなぁ!」
秋彦が叫んだ。羽衣と葵は、たくさんのお土産を勝手に広げはじめていた…。
「もうっ…油断も隙もないんだからぁ〜」
そう言って開きかけのお土産を取り返した。
「ねぇ!姉さんって日向[ヒナタ]ちゃん?」
羽衣が聞いた。
「違うよ。ヒナ姉は今イタリア。オーストリアは祭[マツリ]姉だよ。」
秋彦は取り返したものの包みを直すのに躍起になりながら答えた。
「仙道は兄弟がいるのか。」その声に秋彦は顔を上げた。高瀬は机に寄り掛かり、コーヒーを飲んでいる。
「うん、そう。姉2人に兄1人。みんな海外行っちゃってるけど。」
そう答えながら秋彦は包みを高瀬に手渡した。
「はい。これ、高瀬くんの」
包みは直しきれてなく、中身がはみ出している…。
「…ありがとう。」
それでも礼を言う高瀬は大人なヤツだ。
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