何に迷ってるかはすぐにわかることだった。
アイツだ。
今、確かにアイツのことが頭いっぱいに広がっている。春華が目の前にいるのに。
本当は怖かったのかもしれない。目をあわせたら、読まれそうで。

「私は好きだょ」
俺が答えずにいると、春華が言った。
「一希のこと、誰よりも」
しっかりと俺を見つめてる。その真剣な瞳が、言ってる。
『私は本気なのに、どぅしてあなたは別の人の所に行こぅとするの?』
それがわかるから、辛い。この沈黙が。見つめられてることが。
「私、本気だょ」
今度ははっきりと口に出した。
「だから、一希にも本当のことを言ってもらいたいの。嘘で好きなんて言われたって嬉しくないの。わかるでしょ?」
「…俺は…」
春華を傷つけないためには、どぅ言えばいいか。そんなことわかってる。けど…
「…春華の彼氏を続けられないかもしれない」
春華はうつむいた。
何かを堪えるよぅに、グッと唇を噛む。

…泣かれる。

そぅ思った。しかし、春華は予想外の反応をした。

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