会ったら言ってやりたいことがたくさんあった。

でも何から言えばいいのか分からず、私はただ立ち尽くした。


「元気そうで安心したよ」

「…………」

「随分若い男を連れてるみたいだけど」

「…………」


あの人の言葉に隣でクスッと笑い声を立てる育ちのよさそうな女。

どうせどこかの会社のご令嬢だろう。


「いろいろ大変そうだね」

「………」

「じゃぁ、元気で」


チラッと真の方を見てそう言うあの人の言葉に嫌気がさした。

まるで「君も落ちたね」と言わんばかりの馬鹿にしたような目。

なのに、立ち去って行くあの人に文句一つ言えない自分に腹が立った。

< 107 >

[1]次へ
[2]戻る

[0]目次

Tag!小説


トホーム