会ったら言ってやりたいことがたくさんあった。
でも何から言えばいいのか分からず、私はただ立ち尽くした。
「元気そうで安心したよ」
「…………」
「随分若い男を連れてるみたいだけど」
「…………」
あの人の言葉に隣でクスッと笑い声を立てる育ちのよさそうな女。
どうせどこかの会社のご令嬢だろう。
「いろいろ大変そうだね」
「………」
「じゃぁ、元気で」
チラッと真の方を見てそう言うあの人の言葉に嫌気がさした。
まるで「君も落ちたね」と言わんばかりの馬鹿にしたような目。
なのに、立ち去って行くあの人に文句一つ言えない自分に腹が立った。
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