仕事の時間に押されて急いでいたら、風に煽られ書類が道に飛び散ってしまったことがあった。
そのとき拾ってくれたのが森田くんだった。
…なんて、森田くんの指にある変わったデザインの指輪を見て、さっき思い出したんだけど。
「今度またパーティーするんですけど忙しいですか?」
「あぁ、真から連絡きてたけど…ちょっと分からないな」
「…あ」
森田くんは何か思い出したようにつばの悪そうな顔をした。
「あの…真から聞きました。すいませんでした。すっかり彼女だと思ってて…」
「そんなことっ…」
「真の奴、前から利砂子さんのこと気になってたみたいで…どうにかして接点がほしかったらしいんです。本当すいませんでした!」
「謝らないで。私も森田くん達と仲良くなれてよかったと思ってるの」
真はみんなに話したんだ…ということは、真の彼女だったという記憶は消されてしまったんだ…。
それを寂しく思うのは勝手すぎるって分かってるんだけど…寂しい。
自分の変なプライドを捨てきれず逃げたのは私…。自分の身勝手さに嫌気がさしてくる。
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