「まだ何も知らないじゃん。そっちの方が利砂子らしくないよォ」

「…もう何も言わないんじゃなかったの?」

「そうだけどォ〜」

「ありがとうね」


私がそう言うと由利は目をつぶって車のシートに寄りかかった。

それからは私たちは何も言葉を交わさなかった。

もうこれ以上何も言わないでほしかったし、由利もそれを感じとっていたんだと思う。



過ぎ行く夜の街を、ただ見つめていた……。

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