由利はお酒を口に運ぶたびに、今の彼氏の話をした。
由利のノロケ話はいつものことだ。
だけど今回はとても幸せそうな顔をしている。
私はあの人と付き合っているとき、こんな風に幸せいっぱいの笑みを浮かべていたのだろうか…。
自分のことを理解するのって難しい。
すっかり酔っぱらった由利を支えながら、大通りに出てタクシーをつかまえた。
行き先を告げると、車は動き出す。
由利は普段人の肩をかりなければならない程飲んだりはしない。今日は余程気分が良かったのだろう。
その車内、私は思い出していた。
「二回目だよ…」
真が酔い潰れたときも、タクシーを使ったっけ。
数ヶ月前まではあの人のベンツに乗ってたのに、今じゃ年下とタクシーか…なんて自分の落ち度に笑えたっけ。
でも、私の肩に頭を寄せる真との距離が心地良くて…人の体温って温かいんだなって思った。
「…ねぇ、りさこォ。まだ何もしてないじゃん」
私が物思いにふけっていると、酔っぱらっている由利が突然口を開いた。
< 83 >
[1]次へ
[2]戻る
[0]目次
Tag!小説
トホーム