由利はお酒を口に運ぶたびに、今の彼氏の話をした。

由利のノロケ話はいつものことだ。

だけど今回はとても幸せそうな顔をしている。


私はあの人と付き合っているとき、こんな風に幸せいっぱいの笑みを浮かべていたのだろうか…。

自分のことを理解するのって難しい。





すっかり酔っぱらった由利を支えながら、大通りに出てタクシーをつかまえた。

行き先を告げると、車は動き出す。


由利は普段人の肩をかりなければならない程飲んだりはしない。今日は余程気分が良かったのだろう。


その車内、私は思い出していた。


「二回目だよ…」


真が酔い潰れたときも、タクシーを使ったっけ。


数ヶ月前まではあの人のベンツに乗ってたのに、今じゃ年下とタクシーか…なんて自分の落ち度に笑えたっけ。


でも、私の肩に頭を寄せる真との距離が心地良くて…人の体温って温かいんだなって思った。


「…ねぇ、りさこォ。まだ何もしてないじゃん」


私が物思いにふけっていると、酔っぱらっている由利が突然口を開いた。

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