「下見しに来たの?」
「うん、一人で入るの勇気いったわ」
「一人?」
ぷっと含み笑いをした。
「何て冗〜談!友達と来た」
「何だぁ〜」
そのとき何故かふと、昨日のことを思い出した。
「友達って古着の女の子?」
「え、うん。何で知ってるん?」
「……たまたま見かけたの」
しまったと思った。
わざわざ言う必要のない事だったのに…。
つばの悪そうな顔をしていると。店員の子が笑顔をふりまきながら注文した品をテーブルに並べた。
「そういえば、森田先輩が飲み会にまたりさこさん呼べってうるさいねん」
「…そう」
「彼女なんて言わんかったらよかったかな」
ズキっと胸が痛んだ。
手にしていたフォークを皿の上に置く。
「困るくらいなら初めから相手を考えなさい」
「え?いや、違うって!そういう意味じゃなくて…りさこさんが迷惑かなって」
パッと顔を上げ、慌てて弁解する真。きっと、今は私もの凄く冷たい表情をしてると思う。
私は何を答えるわけでもなく、そのまま料理を口に運んだ。
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