『あ、りさこさん?』
「どうしたの?」
『どうしてるかなーって思って』
「ベランダで一服」
『わはは、かっこいー!』
真はいつも突然電話をかけてくる。………嫌じゃないけど。
暗くて低い都会の空に、煙草の煙が模様を描く。
『なぁ』
「何?」
『何か会いたいな』
「そう」
『"そう"って冷たいー!』
吐き出される煙は次から次ぎへと暗い空に溶け込んでゆく。
「明日のお昼から夕方までなら空いてるけど?」
真は急いで帰るからっと上機嫌で電話を切った。
その後しばらくの間、遠くを眺めていたから、煙草が短くなっていることに気づかず、少し火傷をしてしまった。
夜中に由利にメールを送った。
『私には冒険は向いてないみたい』
< 65 >
[1]次へ
[2]戻る
[0]目次
Tag!小説
トホーム