「そんなりさこさんが俺は好き」

「…三日月と一緒にしないでよ」

しゃがみ込んで低い位置にあった真の顔が目の前に覆い被さり、満月は再び私たちを照らす。甘い香水が少しきつく感じる。まるで時間が止まったように静寂なときが流れる。ザァっと風に揺れる木々の音。
甘い匂いに酔いしれながらも…………………そして我に返る。


―――ドンっ!!


「びっ…くりした、何」

軽く突き飛ばされた真が目を丸くしている。

「…何って…………あ!私これから約束あるから!じ、じゃぁ!!」

「えぇ?!これから?!!もう11時すぎ…」

真の言葉を最後まで聞かずにその場から走り去った。
静まらない鼓動。
異常な頬の熱。
思考一時停止。
目撃者は満月だけ…。

< 44 >

[1]次へ
[2]戻る

[0]目次

Tag!小説


トホーム