「そんなりさこさんが俺は好き」
「…三日月と一緒にしないでよ」
しゃがみ込んで低い位置にあった真の顔が目の前に覆い被さり、満月は再び私たちを照らす。甘い香水が少しきつく感じる。まるで時間が止まったように静寂なときが流れる。ザァっと風に揺れる木々の音。
甘い匂いに酔いしれながらも…………………そして我に返る。
―――ドンっ!!
「びっ…くりした、何」
軽く突き飛ばされた真が目を丸くしている。
「…何って…………あ!私これから約束あるから!じ、じゃぁ!!」
「えぇ?!これから?!!もう11時すぎ…」
真の言葉を最後まで聞かずにその場から走り去った。
静まらない鼓動。
異常な頬の熱。
思考一時停止。
目撃者は満月だけ…。
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