「わはは、冗談やて!」
自分から仕掛けたのに絶句していた私に真はまたあの無邪気な、そしてちょっと意地悪な笑顔を向けた。
鼓動が高鳴る…――。
なぜかは分からない。
「私って素直じゃないから…嫌になる」
ぼそっと呟いた。
初夏の夜風が肌をかする。冷たくもない暑くもない…柔らかい風。まるで真みたいだ。
「言うたやん、三日月好きって」
真はベンチから立ち上がって片手を月にかざした。
「世の中満月が好きな人ばっかりやないよ」
月の光が真の細く柔らかい髪を透かす。月光に照らされる真は何だか大人びて見えた。
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