そこから真の過去の恋愛話を聞いた。昔、お金持ちの女の子と付き合ったことがあったらしく、さんざん振り回されたあげく幼なじみの婚約者の方へ行ってしまったとか…。
"たまには一般人と付き合ってみたかっただけ"とまで言われたらしい。

「何か言い返さなかったの?」

「言い返したで。"お前は二度とたこ焼き食うな!果てろボケっ!!"ってな」

「あはは、何でたこ焼きー?」

「関西人にたこSTOPはきびしいもんあるで」

「あっはっは、たこSTOPって」

こんな感じで真は自分の苦い過去も笑い話として話してくれた。私もこんな風に笑い話にできたらいいのだけど、何も言い返せなかった。あの人に怒りをぶつけられなかったのだ。
何せ忙しい人だったし、クビが決まっても話し合う時間がなく、一度電話がつながっただけ。会議の前だったらしく、話したのはほんの数秒―――。

『ねぇ、どういうこと!?』

『すまない』

『それだけ?!私クビになったのよ?!!』

『あぁ知ってる、上(父)の圧力だろう…』

『…何その言い方』

『これから会議なんだ、すまない。元気で』

< 31 >

[1]次へ
[2]戻る

[0]目次

Tag!小説


トホーム