バイトを夕方で切り上げ、少し足早に向かう。…真の家へ。
夕食の約束の日だ。男の手料理なんて学生時代以来だろうか。……あのセレブは料理なんて作らない人だった。何かのお礼はいつもブランド物や高級レストラン。それはそれでよかったけど、どこか温かみがなかった……なんて考えるのは贅沢なのかもしれない。
あの頃の私は一般の人たちより五十センチ上の人間だとプライドを持っていた。だから環境に緩和されて彼氏と買い物とか、部屋で一緒に夕食とか一般の恋愛行動を下に見ていた。
『そんな学生時代みたいな恋愛ごっこ』
と思っていた。だけど、今私はその恋愛ごっこをしている。真の家へ行くのに少し足のりがはずむ。あの人との恋愛はキラキラしていたけれど、やっぱり温かさがなかった。
―――ピンポーン
―――ガチャ
「こ、こんばんは」
「お疲れ!どーぞ、上がって」
真の部屋に入ると夕飯のいい匂いがして温かみを感じた。レンガ造りの外観に白い壁の部屋の中。おしゃれな大学生が住んでそうなマンションに真は住んでいて、部屋の中は雑誌やCDや服、黒いソファーにガラステーブルにコンポやテレビやパソコンでゴチャゴチャした学生らしい部屋だ。
< 27 >
[1]次へ
[2]戻る
[0]目次
Tag!小説
トホーム