「家どこ?」
「う〜ん」
「おーーい」
「大阪っすー」
「そうじゃなくてー」
それは地元だろ。
真は寝ぼけてロクな答えを返してくれないので、仕方なく行き先を私のマンションに変更した。
運転手さんの目には、私と真はどんな風に映ってるんだろう。兄弟とか?
もしかして恋人同士に見らるてるかな?
ちょっとそんなことを考ぇてみた。窓の外は明るすぎる街灯に照らされた都会の夜が広がっていた。こんな景色を見るとふと思い出してしまう。
あの世界にいた頃を…。
数ヶ月前までは高い外車の助手席からこの景色を見ていた。わけのわからない洋楽がかかっていて、隣には高いスーツに身を包んだ男。
それが今は年下の男とタクシー。かかっているのはわけのわかからないラジオ。
少しあの頃が懐かしくなった。
「ほら、しっかり立って!」
タクシーから真を引きずるように降ろし、マンションのエレベーターにのった。相変わらず真は酔いが回っているようだ。
「俺三階やでー、三階!」
へらへら笑いながら三階のボタンを押す真。
「あー、うるさい。酔っぱらいは黙ってて」
げんなりしながら五階のボタンを押した。
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