服のあと靴まで買ってしまった。別に楽しみにしてるわけなんかじゃない。
家にある靴は仕事用しかないし、あのオフィスをいつも忙しく歩き回っていたせいでヒールがすり減っている。だから新しいのを買うしかなかった、ただそれだけ。レジを打つばかりの退屈な生活にはちょっといい刺激なだけ、それだけよ………きっと。
約束の日。待ち合わせ場所で初夏の夕方の風に揺れる花柄のワンピースに黒いボレロ。人々は絶えることなく目の前を通り過ぎてゆく。
「りさこさーん!」
男の子こと真が小走りで駆け寄ってきた。
< 9 >
[1]次へ
[2]戻る
[0]目次
Tag!小説
トホーム