服のあと靴まで買ってしまった。別に楽しみにしてるわけなんかじゃない。
家にある靴は仕事用しかないし、あのオフィスをいつも忙しく歩き回っていたせいでヒールがすり減っている。だから新しいのを買うしかなかった、ただそれだけ。レジを打つばかりの退屈な生活にはちょっといい刺激なだけ、それだけよ………きっと。


約束の日。待ち合わせ場所で初夏の夕方の風に揺れる花柄のワンピースに黒いボレロ。人々は絶えることなく目の前を通り過ぎてゆく。

「りさこさーん!」

男の子こと真が小走りで駆け寄ってきた。

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