すると、男の子は財布から一万円札を取り出し、私に差し出した。

「何の冗談?笑えないんだけど」

大人をなめるなと言わんばかりにツンと言い返した。

「あぁ、ちゃうちゃん!1日だけでええから彼女のふりしてほしいねん!」

「……ははっ」

馬鹿ばかしくて思わず笑ってしまった。

「仕事終わるまで待ってるから話だけでも聞いて。ほな」

男の子は一方的に言うだけ言って店を出ていった。
仕事が終わると男の子は本当に待っていた。仕方なしに話だけでも聞いてみることにし、近くのファミレスにはいった。

「で、いきなり何?」

煙草に火をつけると男の子は目を丸くして見ていた。

「煙草吸うんや」

「あ、煙草苦手?」

私が聞くと、男の子は突然吹き出した。

「わははっ、及川さんって男前っすね!かっこいー」

いや、嬉しくないし。何だよ男前って…。
男の子はちょっと八重歯を見せて無邪気に笑っている。

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