私は空を見上げた。
明け方の薄ら明るい空が広がっていて、まぶしい朝日が照らしてくれた。
私はふぅーと一息はいて、すくっと立ち上がった。そのとき、変に体が軽かったのを今でも覚えている。



「帰ろっ」

「お?何だ、飛ぶんじゃなかったのか?」

男はふっと憎たらしく笑いながら言った。
本当に変な人。引き止めたかと思ったらこんなこと言う。『やっぱりあんた矛盾してる』って言うと

「言っただろ?俺には関係ないし、本当はどーでもいいって思ってるんだって」

わけ分からないけど、すっきりした。もう一度笑ってみよう。誰から見離されたって、前向いていかなきゃ…なんて思った。
私がドアを開けて立ち去る瞬間、男は『頑張れよ』と振り向かずに手だけを振っていた。

ビルの階段を掛け降りる足は軽かった。

ビルを出て、私は屋上を見上げた。男は上から見下ろしていた。極上の笑顔で。私もほほ笑み返しその場を去った。

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