次に、何て大きい人なんだろうと思った。
男の放つ言葉は、私が求めていた言葉だったのかもしれない。きっと、私は誰かに引き止めてほしかったんだ。情けなくなった。結局男の言う通りで、恐いだけだったのかもしれない。
くだらない人間ばかりだと…何をそんなに必死になって「生」にすがりついているんだと…何て浅はかなんだと…見下していた。
だけど、本当に浅はかなのは、逃げていた自分だった。ありきたりな考えだって人は笑うかもしれない。だけど、今この状況にして本当にそう思う。
「人間、笑って生きたらそれでいいんじゃね?」
男はまた根拠のないことを簡単に言ってのけた。でも私は黙って聞いていた。
「たぶんだけど、楽しいことだってあるからみんな生きてんだと思うし、笑ってることが幸せだって思うから…生きたいんだよ。たぶんだけどな」
友達と笑っていたときは確かに楽しかった。確かに幸せなときはあった。それを私はいつのまにか忘れていたんだ…。
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