気が付いたら、私はその場に座りこんでいた。そしていつの間にか私はその男に今までのこと、思い悩んできたことを話していた。男が何も聞かないで、ただじっと隣に座ってるだけだったから……。
それが何故か居心地がよかった。
「私の親って厳しい人でさ、成績は常によくなくちゃいけないし、門限だって早いし、いつでも親の顔を立てないといけないの。」
「ふーん」
「それが嫌で、髪染めて、塾もやめて、ピアスもあけて、遅くまで遊んで…。ただ親のひいたレールの上を歩くのが嫌なだけだった。」
「ふーん」
「そしたらさー、完全に私のことなんて無視!結局できない子はいらないんだよ。親も教師も自分のことばっかり。ちょっとはみ出した子は切り捨てる。最低な生きものじゃない?」
「あー、まぁな」
それから友達とうまくいかなくなったこと、家庭崩壊、学校での生活…。溜まってたことを一気に話した。その間男は「ふーん」とか「あー」とか軽い相づちを返してくるだけだった。

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