指定された椅子に腰掛ける。
「どれくらいの長さにしたい?」
鏡越しに見つめる美容師さんの視線に私は戸惑う。
やばい。家族以外と口をきくのは5ヶ月ぶりだ。
うまく言葉が出ない。
また曖昧に答えて私は渡された雑誌に視線を落とす。
「では。シャンプー台へ。」
若い女の美容師に代わった。
「私ねー、妹が桜林高校通ってるのー」
紡がれた名前に思わず体がびくついた。
だってそこは私の通ってた高校だったから。
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