私と同じようにして、ベランダの柵にやる気なくもたれ掛かる彼は、黙って言葉を聞いていた。
私は景色に視線を向けたまま、この関係に終止符を打った。

住み慣れた部屋のベランダから見える夕景色は、どこか淋しく見える。
別れの言葉は案外さらりと声になり、そこに悲しみや苦しみなんかはなくて。胸に広がるのは淋しさだけ。この夕景色と同じだった。

何年も同じ時を過ごして、いつしか私達は喧嘩ばかりするようになった。顔を合わせれば口喧嘩。と言ってもポーカーフェイスの彼は怒りが顔に出るなんてことはなかったから、私が一方的に怒っているような感じだったかな。
そんな毎日に、私は疲れてしまった。
このまま生活を続けても、きっといいことなんてない。
どちらにとっても、別れることが1番いいんだ。
そう思った。

いざ決意してみると、何だか気が抜けて、こうして今穏やかに彼と話しているのだけれど。
少しも表情を変えない彼が今何を考えているのかさっぱり見当がつかない。
いつまで経っても、この人は何も変わらないのよね。


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