「距離」


海岸線が長くて雪がたくさん降るこの県で一番都会な街である番代ではよく「偶然」が起こる。学校のマドンナ先生がデートをしてるのを目撃したり、後味の悪い別れ方をした男とすれ違ってしまったり…世間は、この街は…狭いと思う。
あの日雪は降っていなかった。私は友達と別れて家に帰ろうと一月の研ぎ澄まされた空気を切って歩いていた。道路の向こう側に彼女をみた。
中三の終わりに他愛もないことで喧嘩をし絶好した親友の高校の制服姿を初めて見たのはもう高一の三学期だった。のぞ美はいつも賢くて、正しいものを見据えている感じがする子で色白な肌に黒髪の短い髪がまるで宮沢りえみたいだった。私は叫ばないでいられなくなった。
「のぞ美ー!!」
彼女はすぐ私だと気付いてくれた。

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