8.それぞれの『幸せ』
「…雪奈」
いつもははしゃいでいるのに、今日はやけに静かだった西崎くんが、突然口を開いた。
「ん?何?」
その口調が静かで真剣だったから、私はちょっと緊張した。
「昨日のこと…春華がどぅのって言ってた話…」
「あっ…何だ、そのことかぁ」
西崎くんが全部言う前に、私は言った。
「あのね…あの時…」
あの時、確かに春華ちゃんは泣いていた。けど、今日の春華ちゃんは泣いていない。多分、この状態を見たとしても泣かないだろぅ。今の春華ちゃんは…前とは違う気がするから。

「泣いてたって…春華が…?」
「あっ…やっぱり気になるんだ?」
「一応、元カノだから…」
「本当にそれだけ?」
「それだけだょ」
『春華はもぅ、過去の相手だ』
明らかにそんな響きのある言い方だった。
「そっか…安心した」
そぅ言うと、
「もっと信用しろ」
って頭を叩かれた。
「…もぅ、馬鹿になるじゃん」
私も叩き返そうとしたが、背が足りなかった。

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